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プラズマ (plasma) は、「荷電粒子群が不規則な熱運動をする力学系のなかで、全体として電気的に中性で、プラズマの3要件を満たすもの」をいう。プラズマの3要件についてはプラズマ物理を参照。 ギリシア語で「形作る」を意味する πλασμα を語源とする[1]。原義では宗教用語としても使われており、「神に創造されたもの」といった意味で神秘的・霊的なものとも結び付けられていた。現在でも心霊主義ではエクトプラズム (ect plasm) という言葉が使用される。 科学的には、血漿 (blood plasma) または原形質 (protoplasm) を指す言葉としてチェコの生理学者ヤン・プルキニエによってはじめに使われだしたが、後にウィリアム・クルックスが発見した「放射性の物体」 (radiant matter) [2]を指す言葉として転用された。現在の意味で「プラズマ」が使われたのは1928年のアービング・ラングミュアの論文が最初とされている[3]。
総説プラズマ (plasma) はその歴史的な背景から、一般には気体が電離したものとして認知されている。身近にある炎の中では通常の気体を構成する中性分子が電離して、正の電荷をもつイオンと負の電荷をもつ電子とに別れて自由に飛び回っている。全体として電気的に中性な系であるが、構成粒子が電荷をもつため、粒子運動がそれ自身のつくり出す電磁場と相互作用を及ぼしあうことにより、通常の中性分子からなる気体とは大きく異なった性質をもつ。 そこで気体とは別の物質状態であるとして、これにプラズマの名が与えられている。 気体状のプラズマは、実験室内でも古くから真空放電の研究に伴って観察されていた。そこにある電離した気体自体を対象とした研究は1920年代のアーヴィング・ラングミュアに始まり、そこでシースやプラズマ振動の存在など、プラズマの基本的性質が次々と明らかにされた。そしてラングミュアは、1928年にこの物質状態に「プラズマ」という名前を与えた。さらに1950年代以降、エネルギー源としての熱核融合研究や宇宙空間でのプラズマの役割探求、さらには広く応用を進める上での基礎学問として、その研究が進展していった。 典型的なプラズマは充分高温になった物質の状態として定式化され、イオンや電子が自由に飛び回っているとする点で気体状といえるが、そこで生み出された研究方法や概念はある種の条件のもとの固体状、液体状の物質の研究にも有効に用いられる。 かくして、産業分野で利用される、半導体のような固体やイオン化された液体なども、そのある側面についてはプラズマとして研究することにより物性がよりよく理解され、「固体プラズマ」などの新しい研究分野が生まれた。 プラズマの定義には「気体」という言葉は存在しない。 プラズマ物理学における定義は「荷電粒子群が不規則な熱運動をする力学系のなかで、全体として電気的に中性で、プラズマの3要件を満たすもの」となる。 しかしこの定義によればその論理的帰結として粒子系が弱結合であることが導かれ、気体状とのイメージになる。半導体においてもその中の電子と正孔のみに着目することでプラズマとして扱えることになる。3要件については項目プラズマ物理を参照のこと。 プラズマの特徴として、中に多数の自由電子があるため電流が極めて流れやすいという点が挙げられる。電流が流れればその近辺に電磁場を生じ、それがまたプラズマ自身の行動に大きく影響する。そのためプラズマ中では粒子は集団行動をとりやすく、全体として有機的な挙動が観測される。外部から電磁場を掛ければそれに強く反応する。こうした挙動のひとつの現れとして、プラズマ中には通常の気体中には存在しない、電場を復元力とする縦波であるプラズマ振動が存在する。 物質の第四状態プラズマは、物質の三態のいずれにも当てはまらない「物質の第四状態 (the fourth state of matter)」と言われる事がある。この言葉はマイケル・ファラデーが固体・液体・気体とならぶ第四状態として考えた「放射体」(radiant) に、ウィリアム・クルックスが自ら発見した陰極線の放電現象を当てはめたのが由来とされている[1][4]。気体・液体・固体・プラズマの四態に対して、古代ギリシアの哲学者エンペドクレスが提唱した四大元素の「空気・水・土・火」を対応させる比喩が稀に使われる。 現在では、プラズマ現象と固・液・気体間の第一種相転移の概念はまったく別のものとして確立され、プラズマ物理では炎やオーロラなどの電離気体から固体中の電子振動(プラズモン)まで、広い範囲の現象が取り扱われている。 身近なプラズマ一般に気体中で放電することによって生成される。身近なプラズマの例としては、点灯している蛍光灯の内部も水銀ガスがプラズマになったものである。このことはグロー放電を起こしてそれからクルックス管である蛍光灯内のアルゴンやキセノン等に経路状に電流が流れ発光する事と同じである。なお、このグロー放電は放電プラズマの一種である。 稲妻やセントエルモの火もこの類である。 我々の生活に必要不可欠な火(燃焼炎)もプラズマの一種である。他に強力な磁界をもつ高圧鉄塔の電線の周りには同心円状にプラズマが発生する。地下水脈で水が勢いよく岩盤にぶつかることでもその空洞内に発生すると言われている。 電離層、オーロラ、太陽(恒星の内部)、太陽風(コロナ)、星間物質、科学博物館によく展示されているプラズマボールなどもその例である。 2006年9月に打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」によって、恒星を取り巻くプラズマ化した大気の中で起こっている活発な現象を、より詳細に観測・研究できるようになった。 プラズマの種類と産業への応用プラズマには高温プラズマ(プラズマを構成する粒子すべての温度が高い状態、熱プラズマ)と、低温プラズマ(電子温度のみが高い)があり、金属の内部や蛍光灯の内部は低温プラズマと見なされる。高温な熱プラズマは数万ケルビンにも及び、地球上のあらゆる物質を溶かしてしまうため、高融点の材料の開発が求められている。 なお、種々のプラズマにより、核融合、プラズマディスプレイ、溶接、プラズマロケット、カーボンナノチューブをはじめとする立体構造を持つ様々な機能・特性を備えたハイテク新素材の生成技術など、その応用分野は広い。 プラズマは原子レベルで制御ができるため、人間の目では見えない非常に細かい穴を掘る(エッチング)作業を行うことができる。レーザーアブレーションは、固体材料に強力なレーザーを照射することで、固体材料を気化し高密度プラズマを得る技術である。薄膜作成、クラスター生成、材料加工、医療、エネルギーなどの広範な分野で応用されている、最も発展的な分野のひとつである。シリコンなどの半導体にイオン注入する手法は以前からあったが、近年制御性に優れたプラズマイオンを照射する技術が確立されたことにより、さまざまな原子や分子を直接ターゲットに注入し、アルカリ金属内包ナノチューブをはじめとする新機能超分子構造物質の創製が可能になった。磁化プラズマを用いる分野では、スパッタの技術によってさまざまな機能性薄膜の形成が試みられている。高精度でプラズマを生成して制御する技術が確立した結果、従来よりもはるかに高品質のダイヤモンドを生成することにも成功している。 液中プラズマは、液体中でプラズマを発生させる技術である。液体に超音波で気泡を発生させて、その気泡に電磁波を照射することでプラズマを発生させる。周りが液体であるため、非常にたくさんの原料を溶液から供給することができ、さらに材料が高温に晒されて燃えるといったことなどがない利点を持つ。そのためプラスチックや紙などの母材にも、さまざまな物質をメッキすることが可能になる。 レーザープラズマ加速器は非常にコンパクトで高出力が得られる特徴を持つ。キャピラリー放電型プラズマチャンネルによって数十億電子ボルトのビーム加速に成功している。 核融合のプラズマから電力を得るには、猛烈な勢いを持つ荷電粒子を減速させるための逆電界を印加するだけでよい。粒子の運動エネルギーを直接電気エネルギーに変えることが出来るため、80%を超える極めて高い変換効率が実現可能である。従来の原子力のタービンを用いた熱-電気変換効率が30%程度であることを考えると、プラズマの直接発電は画期的と言える。 プラズマボールが放電によって電界と磁界を生み出す性質や、発生している電磁波を視覚的に捉えやすいことなどもあって、次世代型の健康的な電化生活環境を構築するための基礎研究用の実験装置として用いられている例もある。 半導体内での電子と正孔や、金属内の電子の振る舞いはプラズマと酷似しているため、固体プラズマと呼ばれる。 実験装置で作り出される特殊なプラズマ一般には電気的中性を保つとされるプラズマだが、超伝導ソレノイドコイルで作り出した磁場内に、リング状の電極を配置したトラップ装置を使えば、磁界と電界の力を重ね合わせて、非中性状態のプラズマを何もない空中で捕獲することが出来る。このようなトラップ内に電子ビームを照射すると、電子のみで構成された電子プラズマを一定空間内に閉じ込めて高密度に蓄積することも可能になる。 このようにして集めた電子プラズマを減速材として用いて、陽電子を捕獲して蓄積することで、反物質プラズマを大量に生成して実験に用いる道が開けてくる。 プラズマがもつ熱エネルギーに比べて、粒子間のクーロン力が強い場合、プラズマは自由に動くことができない特殊な状態になり強結合プラズマと呼ばれる。木星や白色矮星の内部、中性子星の外郭などでは、プラズマ密度が固体密度を大きく越えるため、プラズマはその複雑なクーロン多体相互作用のために、液体や固体のような物性をもつと予想されている。実験室内で、液状や固体(クーロン結晶を含む)のような振る舞いをする電荷を持つ粒子群が、比較的簡単な方法で作り出されて研究されている。 自己組織化によってプラズマ中に生成されるさまざまな構造ダストプラズマが自己組織化することによって、クーロン結晶などが生成されることが1994年に複数の研究チームによって確認されている。プラズマ構造を積極的に制御することにより、微粒子の糸状結晶なども容易に得ることができる。 プラズマは何らかのエネルギーが外部から供給されて揺らぎが生じると、不安定な様相を見せる。プラズマが揺らいで発生するフィラメント状の構造の代表的な例は、オーロラとして観察できる。パルス発信機を用いてX線放射の実験を行うことで確認できるが、フィラメントや渦といった構造は、条件が整うとお互いが生み出した磁場によって、同じ方向に動いているほかの渦を引き寄せて、自己組織化しながら成長していく。プラズマは螺旋状の渦を作ったり、一定条件下では渦糸が結晶構造を作ることもある。渦の成長はやがて止まって何らかの理由で自然消滅した後に、再び新たなフィラメントを生成していくこともある。このような生成と消滅を伴うエネルギーのサイクルは、グレートウォールとボイドによって構成された、銀河の集団が作る気泡状の宇宙構造が生成されていくメカニズムの中にも認められる。 レーザープラズマ加速の世界では、数十フェムト秒程のパルス長の高強度超短パルスレーザーをヘリウムなどのガスジェットのプラズマに集光させて、振幅の大きなプラズマ波=ウェーク場を励起する。このプラズマウェークは、数十ミクロンの球状の泡構造をしていることがわかっている。レーザーパルスがプラズマ電子を排除することにより、電子の真空状態が作られて、後に残されたイオンチャネルが周りからプラズマ電子を引き戻して収束しようとするために発生する。このとき1テラ電子ボルト/mといった強い電場が局所的に形成される。プラズマの泡が高エネルギーの電子を自ら入射するため、一種の自己組織化現象を伴うのが特徴である。発生するプラズマウェークは超伝導加速空洞そのものと言える。レーザーパルスとともに光速で運動するミクロンサイズの自己組織化型の加速器がプラズマのガスジェット中に瞬時に生成されては消えていることになる。レーザープラズマ加速器の加速距離を得る工夫が進められた結果、キャピラリー放電型プラズマチャンネルによって数十億電子ボルトのビーム加速に成功している。現在300兆ワットのレーザーを用いて100億電子ボルト級の加速に挑戦する計画が進められている。 地球の電離層を巨大なプラズマ実験室として活用するHAARPなどの試みでは、電離層プラズマに対して、100MW級3-10MHzの強力な電波を照射して、反射層付近で生じるさまざまなプラズマ非線形現象が調査されている。キャビトン乱流が発生しては消えていく、生成と消滅の時間的サイクルを伴った構造などもその一つである。将来は電離層プラズマ内により高度な構造を形成していき、電離層プラズマから直接発電で電力を得ようとする構想も描かれている。電離層プラズマを構造化し、そこを流れる電流を用いて演算処理するシステムを作る構想も登場している。 超常現象とプラズマ高温プラズマが目撃されると火の玉と見られることや、プラズマから発せられる高磁場の脳波への影響により幻覚症状を引き起こす可能性があることから、UFOや霊、ミステリーサークルなど、あらゆる超常現象の原因であるとする説が、早稲田大学の大槻義彦教授をはじめとする著名人により唱えられている。 また、超常現象専門家である飛鳥昭雄によると全世界で発生しているミステリーサークルやUFOの全てが自然現象、イタズラや誤認であるとは言えず、それらは米軍が関与した人為的なプラズマ兵器実験であると主張している。 関連語句
関連項目参考文献
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