ヘリコプター

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ヘリコプター(英:Helicopter、(口語)Chopper)は、航空機の一種で回転翼機に分類される。耐空性審査要領第1部「定義」によれば、「重要な揚力を1個以上の回転翼から得る回転翼航空機の1つである」と定義される。

エンジンの力で機体上部にある細長い、ローターと呼ばれる回転翼で揚力を得て飛行する。垂直方向にも運動が可能なため狭い場所でも離着陸できる。

日本語では「ヘリ」や「ヘリコ」とも呼ばれる。ヘリコプターの名前はギリシャ語螺旋(helico-)と(pteron)に由来する。

一般的なシングルロータ形態のヘリコプタ、ベル407

目次

概説

ヘリコプターはローターの迎え角(ピッチ角)と回転面の傾きを調整することによって、非常に複雑な運動ができる。例えば、垂直上昇や垂直降下、空中停止(ホバリング)のほか、機体の向きを保ちながら真横や後ろに進む事もできる。また後述のローターヘッドの形式により、宙返りなどの曲技飛行ができる機体もある。(MD500BK117Bo 105など)

このようなヘリコプターの特徴は、狭い場所や複雑な地形での活動に向いており、軍用以外にも山岳地や海上などにおける物資の輸送や、遭難者の救助、報道取材、農薬散布などの産業航空用に適している。ラジコン玩具も、電子ジャイロの小型化、高性能化により複雑な姿勢制御が容易となった。結果、簡単に少ない空間で飛ばせる事から、ホビーとしての人気も高い。また自動制御のロボットヘリも観測や農薬散布用などに実用化されている。

しかし、翼の固定された航空機固定翼機飛行機)に比べると、一般に速度が遅く、燃費も悪く航続距離も短い。また、アメリカではヘリコプターの騒音が社会問題になっている。この点を改善しようという試みが、ティルトローター機やティルトウィング機である。

歴史

Focke-Wulf Fw61
カモフ Ka-8

ヘリコプターの研究は遠く紀元前中国竹トンボに始まって、15世紀レオナルド・ダ・ヴィンチスケッチ(このスケッチを基にしたマークが、かつて全日空機の垂直尾翼に描かれていた)、さらには18~19世紀のジョージ・ケイレイらの模型などと進められてきたが、実際パイロットを乗せローターを使って地上を離れたのは20世紀になってからの事である。(かのトーマス・エジソン燃焼反動を利用したヘリコプターを研究したが、爆発事故が発生したため(負傷者なし)、研究を打ち切っている。

固定翼機が登場し、ヘリコプターが実用化されるまでの間に、オートジャイロが現れ、回転翼の挙動に関する空気力学機械工学的な知見が得られた。

1907年フランスのポール・コルニュ(Paul Cornu)が約2mの高さで20秒間のホバリングに成功した。 実際に、きちんと飛行できるヘリコプターが最初に飛行したのは、ハインリッヒ・フォッケにより1937年ベルリンで開発されたFocke-Wulf Fw61である。

ロシアから米国へ亡命したイゴーリ・シコルスキーもヘリコプターのパイオニアの一人で単ローター、尾部ローター付という、今日の反トルク・テール・ローター形式の基礎となった、VS-300を1939年に初飛行させた。これの発展型が第二次世界大戦末期に米軍で用いられたといわれる。

実際に回転翼機で垂直上昇/垂直着陸/空中静止(ホバリング)を得るには重量あたりの出力が小さいレシプロエンジンでは限界があり、軽量で高出力なガスタービンエンジンの採用を待たねばならない。飛行機の発明者 オーヴィル・ライトも1936年の書簡中でヘリコプターは実用的でないとしている*

軍事目的では、英領マレー(現マレーシア)での対ゲリラ戦や朝鮮戦争から利用されているが、本格的な運用としてはベトナム戦争が初めてである。

1955年にフランスのアルウェットSE3130(Alouette II)が世界最初にガスタービンエンジンを搭載したヘリとして登場し、いくつかの世界記録を塗り替えた。これ以降、ジェット・ヘリというヘリコプターの一分野が作られてゆく。

日本では第二次世界大戦中にもあったが1988年6月20日-1991年10月18日まで、シティエアリンクがヘリコプターによって羽田空港成田空港を結ぶ路線を運行していたが、一般の飛行機に比べ騒音や運行コストが高く、航空路線としては不採算なため廃止となった。

現在では東邦航空により八丈島-御蔵島-三宅島-伊豆大島-利島の往復と、八丈島-青ヶ島の往復で東京愛らんどシャトルと名付けられた定期航路が運行されている。これが現在のところ日本で唯一の定期乗合ヘリコプター航路である。

香港マカオではこの2点間を結ぶヘリコプターの定期航路(香港エクスプレス航空)があり、かつてこれは世界で唯一のヘリコプターによる国際線の定期航路であったが、どちらも中国に返還されたため、現在では(出入境にパスポートが必要ではあるものの)国内便として運航されている。その他、利用客の多い定期路線としてはモナコ-ニースフランス)間やバンクーバー-ビクトリア間などがある。

用途

ヘリコプター用語

コレクティブピッチ(略称CP)
すべてのメインローター(後述)の迎え角を同時に変化させる事により、上下方向の揚力を同時変化させる事を言う。これにより、上下方向の操縦を行う事ができる。コレクティブ・ピッチ・レバー(CPレバー)でこの制御をおこなう。
オートローテーション
オートローテーションとは、エンジンが停止しても降下を続けることでメインローターを回転させ、安全に降下飛行を続ける状態をいう。旋回や降下率をある程度制御できるので、安全に着陸できる。これにより、エンジン停止などの緊急事態の際、地上の一点に着陸させることが可能。固定翼機が長大な着陸場所を必要とするのに対し、広い着陸場所を必要としないので、運用上非常に都合がよい。しかし、この状態での着陸は、極めて高度な操縦技量が要求されるのは言うまでもない。オートローテーションの項を参照
サイクリック・コントロール
周期的にメインローターの迎え角を変化させる事をいう。CPが同時に迎え角を変化させるのに対し、回転のある一点で迎え角を変化させる。この事で、回転面を任意の方向に傾ける事ができる。また、速度が増すに従い、揚力の左右不均衡が生じるのでこれを打ち消すために、回転のある一点で周期的に迎え角を変化させる事をいう。飛行速度の限界の項を参照
テールローター
機体尾部にある小さな回転翼のこと。メインローターが回転することで、機体が反作用によって逆回転方向の力を受ける。これは「反トルク」(逆トルク、アンチ・トルク = Anti torque)と呼ばれる反作用であり、このままでは、機体が回転して操縦不能となる。このため、テールローターによって推力を発生させメインローターの回転とは反対の回転力(推力)を与え、機首方向の安定を図る。また、機首方向を変化させるのにも使用される。テールローターはエンジンで駆動され1,300rpm程度の回転数で常に回っている。型式や配列によっていくつかの種類がある。テールロータの項を参照
ホバリング
ヘリコプターの最も特徴的な飛行形態の一種。空中に静止している状態をいう。この状態は前後、上下、機首方向の全てにおいての速度がゼロの状態である。この飛行方法により、救難活動や物資の吊上げなど多彩な運用が可能である。特に強風下での救難活動や、高度が高い山岳地などでのホバリングは、非常に高度な操縦技量が要求される飛行である。
メインローター
機体上部で回転する翼のことで、これが回転翼の名称由来になっている。これが回転する事により飛行に必要な揚力を得る。また、回転面を傾ける事により、前後左右の飛行が可能となる。エンジンで生み出された回転力は、メインロータを300rpm~400rpmで回転させて飛行する。また型式や配列により、いろいろな種類に分類される。メインロータの項を参照

基本的な操縦法

ベル204の操縦席
AH1sの操縦席
UH-1Jの操縦席

ヘリコプタの操縦席は、ほとんどが機体前部に左右2座席備えられており、それらは左右で同じレイアウトのレバーやステックが、機械的に連動されている[1]

前後左右への進行方向の操縦は右手でサイクリックコントロールスティック(略称:サイクリック = 操縦桿)を操作して、メインローターの回転面の傾きを調整して行う。上昇下降方向の操縦は左手でコレクティブピッチレバー(CP)を操作してメインローターブレードの迎え角を増減して行う。

またローターの回転軸を中心にした機首方向の調整は、両足を用いて左右のラダーペダル(アンチトルクペダル)を操作し、テールローターブレードの迎え角を増減させて行う。エンジンの出力制御は、CPレバーのグリップや多発機などでは天井にあるレバーで行う。

一例として、単発エンジン搭載のシングルメインローター(ローター回転方向は機体を上から見て反時計方向)という条件であれば、上昇のためCPを引き上げるとメインローターのトルクが増大して機体が右に回り始めようとするので、機首方位を保つために左ラダーペダルを踏み込み、テールローターの推力を増大させてこれを打ち消す必要がある。

同時にテールローターの推力が増大すると機体が右側進を始めるので(ドリフト)、サイクリックを左に操作して右側進を止めなければならない。これら一連の特性をカップリングという。

ピッチ増減によるエンジン回転数の制御はタービンエンジン機の場合、燃料量の制御が自動的に行われ補正されるので、スロットルグリップによる回転数の制御は不要である。

レシプロエンジン機の場合でも、エンジンガバナー(回転数補正機構)が装着されていれば、ある程度までのピッチ増減であれば自動補正も可能である。

しかし、操作量が大きい場合やエンジンガバナー非装着の場合などはCPレバーのスロットルグリップも操作して常に適正回転数に保つ必要がある。パイロットはこれら全ての飛行状態において、両手両足で3つの舵を調和させて操縦しなければならない。

メインローター

ヘリコプターのメイン・ローター・ブレードの3つの運動

メインローターの翼の1枚1枚を(メインローター)ブレードと呼ぶ。このブレードは固定翼機での主翼とエレベーターやエルロンの機能を兼ね備えており、進行方向と対気速度、上昇や下降運動中や加減速運動、ブレード自身の回転に対する加減速によって複雑な動きをする。

ブレードはローターヘッド、又はハブと呼ばれる回転軸の取り付け部に取り付けられている。ヘリコプターには全関節型、半関節型、無関節型、ベアリングレス型のローターヘッド形式がある。(後述)

メインローターブレードの3つの運動
  • フラッピング:上下動
  • ドラッギング:回転方向の動き
  • フェザリング:迎え角の変化
フラッピング
ヘリコプターが飛行中は、多くの場合にブレードは揚力によって上方向にフラッピングしており、回転するメインローター全体の形が逆円錐形になっている。この事を「コーニング」(コーン状態)と呼ぶ。上に反ったブレードの翼端と逆円錐の底面との角度をコーニング角と呼ぶ。全関節型のローターヘッドではコーニング角に応じて上下方向にフラッピングするため、ブレードには曲げモーメントは生じない。
ドラッギング
回転方向に個々のブレードが運動するのをドラッギング、またはリード・ラグ運動と呼び、その角度をドラッグ角と言う。エンジン始動時の起動トルクがメインローターにかかるときには最大で25度ほども、ブレードが遅れて角度が付く。通常飛行時には遅れ方向で10~15度程度、地上でエンジン停止時には進み方向で3度ほど、オートローテーション時には±0となる。
フェザリング
フェザリングはブレードの迎え角の変化である。フラッピングとフェザリングは関係が深い。フラッピングによってブレードが上に上がると(フラップアップ)、フェザリング角が小さくなるようにブレードが曲がるようになっている。このため、前進飛行中に左右のブレードに当る空気の速度が異なっても、揚力が大きくなる前進側のブレードはフェザリング角が小さくなり、揚力が小さくなる後進側のブレードはフェザリング角が大きくなり、自動的に左右の揚力が調整されるように出来ている。

ブレードが前後左右のいずれかの位置で常にフェザリング角が大きくなるようにすれば、そちらの側だけ揚力が増すため、メインローターの回転面が傾いてゆく。反対に前後左右のいずれかの位置で常にフェザリング角が小さくなるようにすれば、そちらの側だけ揚力が減るため、やはりメインローターの回転面が傾いてゆく。こういったことを行なうのが、サイクリック(操縦桿)に接続された、スワッシュプレートである。スワッシュプレートはローターヘッドの下部にあって、メインローター軸と一緒に回転しながらサイクリック(操縦桿)の動きにあわせて、ブレードのフェザリング角を常に調整している。メインローター回転面の傾きによって飛行方向が決定されるが、実際の回転面の傾きは「ジャイロプリセッション」よって回転方向に対して90度遅れた方向に現れる[1]

ローターヘッドによる分類

全関節型(Fully Articulated Rotor)
フラッピングヒンジ、ドラッグヒンジ、フェザリングヒンジによって3軸全ての方向への動きを可能にしたローターヘッド。
半関節型ローター(Semi-Articulated Rotor)
フラッピングヒンジ、フェザリングヒンジによって2軸方向への動きを可能にしたもの。ドラッグヒンジはないため、回転面方向での進みや遅れの運動はローターヘッド側ではなく、ブレードのたわみで対応する。全関節型に比べ、単純な構造となるため、初期のヘリコプターや現在の2枚ブレードのヘリコプターに採用されている。しかし、マイナスGによる運動制限がある。これは、強いマイナスGのかかる運動では、ローターヘッドが浮き上がりマストが破壊されるマストバンピングが発生するため。急激な頭下げ動作や、起伏の激しい山の稜線に沿って飛ぶ運動が、制限されるという大きな欠点もある。
無関節型ローター(Hingeless Rotor)
フェザリングヒンジによって1軸方向だけの動きを可能にしたもの。全関節型に比べて構造が簡単であり、非常に運動性能に優れており、固定翼機と変わらない曲技的な飛行も可能である。ブレードの根元に大きな曲げモーメントがかかるため、複合材料による強靭なブレードの製造技術の完成によって初めて実現出来た。2008年現在では、無関節型だけに限らず、全関節型や半関節型でも複合材ブレードは一般的になっている。
ベアリングレスローター(Bearingless Rotor)
ヒンジ類を全く持たず、真の意味での「無関節」である。通常、ヒンジ部には円滑な動作のためのベアリングが内蔵されるが、機能維持のため潤滑などの定期的なメンテナンスが必要であり、故障のリスクも伴う。これまでのヒンジに相当する部品は、ハブとブレード翼面の間の「カフ」部分に「ヨーク」と呼ばれる複合材で出来た板バネ機能を持つ部品が柔軟に弾性変形することでヒンジの機能を果たす。ヨークによって、軽量化と長寿命化、安全性の向上と抗力減少、構造の単純化が実現出来る。。[1]

メインローターによる分類

シングルローター式 ベル407
シングルローター式
最も一般的な形式。大型機種や特殊なヘリを除けば、ほとんどがメインローターが1つのシングルローター機である。構造が簡単で部品数が減り、重量も軽くできるなどの利点があるが、トルク相殺用のテールローターに前進飛行時に約3~4%、ホバリング時に約10%の馬力が必要である。テールローターが地上で人員や障害物と接触する危険がある、重心移動の範囲が狭い、大型ヘリコプターではメインローターの寸法が大きくなる、などの不利な点もある。
ツインローター式
同軸反転式Ka-50
タンデムローター式CH-47
交差双ローター式 K-MAX
2個のローターを持ち、それぞれが逆に回ることにより、ローターのトルクの影響をお互いに打ち消す方式。配置により次のようなものがある。
  1. 同軸反転式 - ローターが同軸上に2つあり、互いに反転して回るもの。全長がメインローターの直径のみで決まる事から、全長が小さくなる上、揚力に関係のないテールローターに出力を割く必要がないという利点がある。反面、ローターハブと操縦装置が複雑になり。重量が増加するという不利な点もある。
  2. タンデムローター式 - ローターが前後に2つ配置されているヘリコプター。縦揺れに対する操縦安定性が高く、前後方向の重心移動範囲も広い利点を持ち、ヘリコプターの重量に対してローターが小さくてすむため、構造的にも有利である。反面、低い前進速度での安定性が低いなどの不利な点がある。
  3. サイドバイサイドローター式 - ローターが胴体を挟んで並列に配置されているもの。横揺れに対するの操縦安定性が高く、ローターが小さく横方向の車輪間距離を大きく取ることができる(従って、地上安定性が良い)。特に、構造重量を増したり抗力を増すことなしに、固定翼を装備できる利点がある。反面、ローターを支持する張り出しや、伝動軸による構造重量の増加や機械抵抗が増えるなどの不利な点がある。→ 旧ソ連のMi-12
  4. 交差双ローター式 - 機体直上の近接した位置に2つのローターを持つが、互いに衝突しないよう同調しており、わずかに外側に傾けて取りつけられている。同調機構から「シンクロプター」とも呼ばれる。機体を小さくまとめる事ができるが、ローター取り付け部や伝動装置が複雑になり、重量が増加するなどの、不利な点もある。
チップジェット式
翼端に推進装置を取り付けてローターを回転させることで、反トルクを生じさせないようにするものであるが、騒音が大きい、燃料消費が大きいなどの技術上の問題も抱えておりガスタービンエンジンの一般化によって姿を消した。
マルチローター式
ローターが3組以上あるもので、タンデムローター式とサイドバイサイド式の利点と、全速度域にわたり静的に安定である利点を持つが、部品数が多くなり、伝動装置が複雑になる事などから実用性に乏しく、現在この形式は用いられていない。[2]

テールローター

テールローターとその派生型

ヘリコプターはローターが回転し、揚力を生み出すことで浮遊する。 このとき、機体側がローターを回転させることの反作用として、ローターが機体を逆方向に回転させようとするモーメントが生じる。これは「反トルク」、カウンタートルク、トルク効果などと呼ばれる。この反トルクを打ち消すために、以下のような方法が使われている。

テールローター
尾部に備えたローター(テールローター)により横向きの推力を生み出し、その推力によるモーメントで打ち消す。機体の回転方向と推力の向きの関係により、プッシャータイプ(テールローターの推進力で尾部を押す)とトラクタータイプ(テールローターの推進力で尾部を引っ張る)がある。この方法は、現在のヘリコプターではもっともよく使われる方式である。
ノーターの原理。青色が空気の流れ。1.空気取入口 2.可変ピッチファン 3.コアンダ・スロット付きのテイルブーム 4.垂直安定板 5.直噴ジェットスラスター 6.下降流 7.コアンダ効果による横推力の発生を示したテイルブームの断面図 8.反トルク力
実機の例-MD500N
フェネストロン実機例-ユーロコプタEC120B
ノーター
ノーター(NOTAR、No tail rotor)ではテールブーム基部のファンにより低圧縮高ボリュームの空気をテールブーム内に送り込む。この空気の一部を(メインローターが反時計回りの場合)テールブーム右側からテールブームに沿って下方向に噴出させ、テールブームの周りにコアンダ効果を利用した気流の循環を作り、メインローターから吹き下ろされるテールブーム左右の空気流に速度差が生じ、擬似翼型を成型することにより空力的揚力(エアロダイナミクスリフト)を発生させ、反トルクを得る。
またテールブーム後端にはヨーコントロールペダルによりコントロールされるダイレクトジェット噴出口があり、横方向のコントロールに使用される。
ホバリング中のエアロダイナミクスリフトと、ダイレクトジェットによる反トルク効果は50%程度であるが、前進飛行速度が40-95km/mぐらいでは、吹き降ろす風が斜めになるためにブーム側面のサーキュレーション・ジェットは効果を失い、後端からのダイレクト・ジェットだけが有効となる。ただ、このくらいの速度からは後端の垂直安定版が風を受けることでトルクを打ち消す効果が生じるため、エンジン駆動のファンを弱くして燃費向上に寄与することが出来る[1]。騒音が少なくなるという利点もある。
フェネストロン
垂直尾翼に相当する部分に、複数のファンを埋め込んだフェネストロンと呼ばれるタイプも存在する。これは意識的に不等間隔に配列したファンにする事で、各ファンが発生する固有の可聴音を意図的に変更し、各ファンが互いの可聴周波数を相殺するようにして、騒音低減と回転部分に対する接触の危険を低減させたタイプである。かつては仏アエロスパシアル特許であったが、現在は特許期限の20年が過ぎている。

テールローターの危険、その他

テールブームが上方にある例。BK117-B2

テールローターはメインローターと異なり、比較的低い位置にある場合、乗降時に人がテールローターに接触する危険がある。このためテールブーム(胴体からテールローターへつながる構造部分)の取付け位置を高くし、テールローターが低い位置にならないよう設計された機体もある。これらの機体は、テールローターに人が接触する危険性が低いので、機体後部に安全に近寄る事ができる。また、胴体後部に観音開きのドアを取り付ける事で人員や貨物の収容性が良くなり、ストレッチャー(担架)なども収容し易くなるため、ドクターヘリ(EMS)などに好んで使用されている。

ヘリの飛行特性

旋回飛行

前進飛行中に旋回を行う場合、右旋回ならサイクリック(操縦桿)を右へ倒し、機体を「右バンク」させると同時に、右ペダルを踏み込んで機首方向を変えるという操作を行なう。この時、バンク角に見合った適切なペダル操作を行い、機体が横滑りしないように旋回操作を行う。これらは、固定翼機と同様である。また、深いバンク角での旋回を行うと、鉛直方向の揚力が水平飛行時よりも不足し、高度が低下するので、CPレバーを引き、揚力の不足分を補う操作を同時に行う必要がある。

オートローテーション (Autorotation)

オートローテーションとは、降下する事により空気からエネルギーをもらい推力を発生させる飛行であり、エンジンからの動力の供給はなく、メインローターは空気力のみで回され、これによってテールローター、補機なども駆動されている状態をいう。ヘリコプターはこのオートローテーションにより、全てのエンジンが停止しても安全に着陸する事が可能である。 また、オートローテーションはヘリコプター操縦に必須の技術であり、ヘリコプターパイロットは必ずその訓練を受けている。ヘリコプター技能試験においても試験要領に含まれており、ある一定の高度から、地上の規定の広さの中へ安全に模擬着陸ができることが要求されている項目である。


操縦操作

全エンジンが故障した場合には、ローターを駆動するエネルギーがなくなるので、CPをそのままに保持していると、メインローターの回転数が急激に低下し、ブレードが失速して揚力を失う。このような回転数の低下を防ぐため直ちにCPをフルダウンにすると共に、右ペダルを踏み込んで(メインローターが上方からみて反時計方向回転の場合)機首方向を維持し、次いでサイクリック(操縦桿)を操作し、希望する前進速度を得る。なお、ローターの回転数はオートローテーション時の常用最大と最小値の間になるように、CPを操作(アップ:回転数減、ダウン:回転数増)し、限界値を超えないようにする。また、以下に述べる、高度と速度によるオートローテーションの制限も存在するので、パイロットは常にこれらの事を念頭に置いて操縦する事が求められる。

「ヘリコプターのメインローターは上向きの揚力を得る方向にピッチ(傾き)でエンジンからの動力で回転している。エンジントラブルなどで動力が絶たれると当然ローターの回転は下がりローターが機体を吊り上げる事はできなくなり落下することになる、これを避けるのがオートローテーションである。これはメインローターのピッチを飛行時の逆向きとし(機体は降下する)下からの風でローターに風を当てて回転させておき接地寸前までこれを維持する。接地寸前ではローターは前項の操作により回転を持続しているので再びピッチ(傾き)を戻し揚力を得る方向として軟着陸させる事が可能となる。」

飛行回避領域

H-V線図(高度-速度包囲線図 Height-Velocity Envelope,デッドマンズカーブという呼称もあるがデッドが死を意味する事から現在はH-V線図と表記されることが多くなっている)と呼ばれているものでもしエンジンが故障し、エンジンの出力によるローターの回転力を失った場合、ヘリコプターはオートローテーションを行って、適度の沈下率及び前進速度を保って安全に着陸するのであるが、エンジン故障時からオートローテーションに移行するにはある程度時間がかかり、また、その間、高度も低下する。このため速度が低い場合は高度の制限、高度が低い場合は速度の制限が設けられる。この制限内ではオートローテーションに入ろうとしても、適度の沈下率、及び前進速度を保つ事ができず、地面に安全に着陸することができない。高速度低高度の場合、エンジン故障の際に前進速度を充分減速する余裕がなく、高速のまま接地する事となる。双発エンジンの機体では、片発故障時に対してH-V線図(高度-速度包囲線図)が規定されているが、制限範囲は小さくなる。また、機種によっては機体重量が軽い時には制限範囲がなくなる場合もある。[2]

飛行速度の限界

前進飛行時
ブレードの対気速度は回転方位によって異なり、特に前進方位と後退方位ではその差が大きい。ブレードの迎え角が同じであれば、揚力は速度の2乗に比例するので、左右のアンバランスが生じる。従って、前進方位にきた時には迎え角を小さくし、後退方位にきた時には迎え角を大きくしてバランスをとる必要がある。これはブレードに周期的なピッチ変化(縦のサイクリックピッチ)を与えることによって行う。
限界速度付近
さらに速度が増加すると、後退側ではますます対気速度が減少し、かつ逆流領域も増加するので迎え角をより大きくする必要があるが、迎え角が失速角に達するとそれ以上は揚力を増加させることはできなくなる。一方前進側では前進速度と共に対気速度が増加し、ブレード上では音速を超える速度が生じて衝撃波が発生し抵抗が急増する。従って、ローターを回転させるために必要なパワー(形状抗力パワー)は、後退側での失速による抵抗増大と相まって急増する。
限界速度
後退側ブレードでは、ほぼ全面が失速と逆流領域になって、揚力を発生させる事はほとんどできなくなる。そのため、前進側でもバランス上揚力を発生できないので、揚力を発生しているのは回転面の前方と後方のみとなる。しかし、なおも速度が増加すると、これらの部分も失速が始まり、ローターはもはやヘリコプターを飛行させるだけの推力を発生できなくなる。これがヘリコプターの速度限界であり、400km/h付近と見られている。[3]
現実的な最高速度
このような飛行状態では、失速と衝撃波のため形状抗力パワーも非常に大きなものとなり、ローターの効率は低下する。また、大きな出力を必要とするので、エンジンとトランスミッションも大きく、重くなるなど、ヘリコプターとしての効率も低下する。従って現在用いられているヘリコプターの最高速度は、経済性、現実性の観点から300km/h程度であるものが多い。

降下と着陸進入

水平飛行から降下への移行

水平飛行から降下へ移るのは、単に巡航高度を低高度に変更する場合と、引続き進入着陸を意図する場合がある。巡航高度を変更するだけの目的で降下する場合は、巡航速度を維持したまま降下するが、降下に引き続いて着陸を意図する場合は、着陸進入に適した降下速度にあらかじめ減速しながら降下に移る。

操作手順としては、まずCPレバーを下げて、機体に所望の降下率を与える。この時右ラダーペダルを踏んで(メインローターが上方からみて反時計方向回転の場合)、機体を横滑りさせないように操作しながら、サイクリック・スティックで所望の降下速度に調整をする。

一般にシングルロータのヘリコプタでは、CPを下げると機首が下がり、上げると機首が上がる傾向がある。従って、降下飛行に移行する場合は、機首下げによって速度が増えやすいので速度保持に注意しなければならない。

最終進入から着陸

着陸進入の形態には大別して次の3種類があり、着陸場所の地形や、離着陸機の混雑度を考慮してパイロットの判断で使い分けられる。

  1. 通常進入
  2. 高速進入
  3. 低速急角度進入

最終進入とは、着陸に対して最終的に着陸点に正対して直線進入降下飛行をいう。着陸スポットに確実に到達するために、自ら設定した経路、進入角を外れないように特に正確な操縦操作が要求される。

通常着陸進入

通常進入は、速度VY(最良上昇速度)、進入角6~7°で開始する。正確な進入角に乗って降下した場合、対地高度150フィート(約50メートル)から着陸に備えて減速操作を始める。

減速降下中の速度と高度の関係は、そのヘリコプタの飛行規程に示されているH-V線図(高度-速度包囲線図 Height-Velocity Envelope)を考慮した諸元に従って操縦しなければならない。

VY以下に減速すると、減速につれて沈下が大きくなるので、CPを操作して進入角を保つ。着陸スポット上にホバリングするため一定の減速率で減速を続けるが、一般的に速度計は極低速(約20ノット以下)では信頼性に欠けるため、地面の流れなど、目視感覚で速度処理をしながらスポット上に、対地高度1~3メートルでホバリングし着陸進入を終了する。

高速進入着陸

飛行場のような障害物のない広い場所で、後続の侵入機に早く進入コースを開放するなど、必要に応じて使用される進入方法である。速度約100ノットで、通常進入よりやや浅い4~5°の進入角で最終進入経路に入る。

対地硬度150フィート(約50メートル)まで速度約100ノットを維持し、そこから急減速動作に入り着陸スポット上にホバリングする進入方法で、急減速過程では、減速のための機首上げ操作により、機体が上昇しないようにCPレバーを大きく下げなければならない。そして、次にホバリングに移るためCPレバーを大きく上げる操作が必要になる。

このため、ラダーペダルの操作もCPレバーの操作に合わせて、減速過程では大きく右ラダーを踏み、ホバリングに移行する時には、大きく左ラダーを踏んで機首方位を保たなければならない。

このように高速進入から急減速停止するために、機体姿勢が大きく変化する事になり、サイクリック・スティック操作による機体の動き(上昇または沈下)を見て、進入角と機首方位を維持するため、CPとラダーペダルの操作の切り替えのタイミングと操舵量を瞬間的に判断して、素早い操作が求められる。

機動飛行

20世紀末から曲技的な飛行が可能ないくつかのヘリコプターが登場している。従来のヘリコプターは、細長いローターブレードが、全関節型や半関節型という方式でローターヘッドに接続されている。ドイツ製のBo105、川崎重工とMBB(メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム)共同開発のBK117、フランスとドイツの共同開発したユーロコプター製「PAH-2 タイガー」戦闘ヘリ、米国製「AH-64 アパッチ」攻撃ヘリ、日本製「OH-1」観測ヘリは、このヒンジ機構と呼ばれるブレードとローターヘッドの固定に無関節型を採用しており、強度が高い。この強度によって機動飛行と呼ばれる「ロール」、「ループ」、「インバーテッド」、「インメルマンターン」などの曲技的飛行が可能となっている。これらの背面状態での飛行中には、ロータ迎え角(Angle of Attack)を逆位置にして逆方向での揚力を得なければならないため、ローターの設計と共にCPも適切にデザインされている。[4]

その他

メインローターの回転方向

メインローターの回転方向は、米国製のヘリコプターでは反時計回り、欧州製では時計回りであることが多い。このため、ヘリパイロットが機種転換を行なう場合には異なった回転方向の機種では困難が伴う。

東京消防庁では、操縦席とホイストの位置関係から、救助活動には時計回りのローターが有利との判断から、フランス製の機材を導入している。

日本での耐空類別

「耐空性審査要領」には「耐空類別」として以下に分類されている。

  • 回転翼航空機普通N類 - 最大離陸重量3,175kg以下の回転翼航空機
  • 回転翼航空機輸送TA級 - 航空運送事業の用に適する多発の回転翼航空機であって、臨界発動機が停止しても安全に航行できるもの
  • 回転翼航空機輸送TB級 - 最大離陸重量9,080kg以下の回転翼航空機であって、航空運送事業の用に適する航空機

[1] 軍用機は除く。

出典

  1. ^ a b c d e 鈴木英夫著 「図解ヘリコプター」 BULEBACKS 講談社 2001年10月20日発行第1刷 ISBN 4-06-257346-6
  2. ^ a b 「ヘリコプタ」 社団法人 日本航空技術協会 ISBN 4-930858-45-3
  3. ^ ギネス・ワールド・レコーズでは、1986年アグスタウェストランド リンクスが出した400.87km/hをヘリコプターの最高速度として認定している。
  4. ^ 軍事研究2007年10月号「ヘリコプター技術(その2)」

関連項目

外部リンク

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