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毒(どく)、毒物(どくぶつ)は、生物の生命活動にとって不都合を起こす物質の総称である。[1]
概要毒は、生命活動に芳しくない影響を与える物質の総称で、そういう性質は毒性(どくせい)とよばれ、またそういう性質があるもの(物体・生物問わず)は有毒(ゆうどく)と表現される。なお、これを専門に扱う学問としては毒性学(どくせいがく)がある。 英語では広義の毒全てを含んで「Poison」と呼び、動植物に微生物を含む全ての生物由来の物に対して「Toxin」と呼び、昆虫を含む動物由来の物を「Venom」と区別している。 つまり、「Poison」「Toxin」「Venom」と順番に範囲が狭くなっている。 毒物が生体へ影響を与えるメカニズムは毒により異なるため、不都合の種類と程度は、毒の種類とこれを与えられた生物とにより多様である。 ある生物にとっての毒が別の生物には毒でないこと(選択毒性)もある。たとえば、抗生物質はある種の微生物にとっては毒だが、その他の生物にはほとんど害を与えることはない。同様の選択性は多々あり、除虫菊のように昆虫には致命的な毒が哺乳類などにはほとんど無害であったり、逆にテトロドトキシンは人間を含む他の動物には致命的な毒物であるのに、自ら生産したわけではないフグは高濃度のテトロドトキシンを体内に蓄積してなお普通に生きている(ただし一定以上に高濃度のテトロドトキシンに晒すと中毒死する)。 また、その化合物が微量だけ存在することは生物にとって必要だが、一定量以上ある場合には毒としても働くビタミン、ミネラルなどもある。例えば、カルシウムは骨の形成に必要であるが、摂取しすぎると腎臓を傷めることになる。ビタミンAなどは過剰摂取により様々な疾病の原因ともなる。 人体などに重篤な影響を与える毒に対して、別の薬物を投与して、影響を抑えることを解毒という。 ただし毒物も生物の生理機能に与える影響が強烈であるというだけであり、これの作用を量を計るなど意図的にコントロールすることで医薬品として用いられている場合も多々存在する。過去に発見された様々な毒物(特に生物由来の毒)も、各々医療面での利用方法が研究されており、推理小説でお馴染みのトリカブトや忍者が使ったことでも有名なガマガエルの毒も、古くから漢方薬などで利用されていたことが知られている。 「毒」の基準・種類毒性学の基本的な考え方では、ほとんどの物質は多かれ少なかれ毒性がある。砂糖や食塩とて大量摂取すれば危険だが、これらはふつう毒とは言わない。毒とはだいたい後述の毒物や劇物に相当する程度の毒性があるものと考えられている。 日常的に「毒」と称するのは、急性毒性あるいは慢性毒性を有する物質だが、そのほかに発癌性や催奇性など(特殊毒性と総称する)を有する物質も多く、極端な例としては発生段階に於いて強力な催奇性を示すが、そのほかの毒性(副作用)はごく弱いサリドマイドがある。 毒の発生源外敵から身を守るため、あるいは獲物を確実に捕らえるために様々な生物が毒を持っている。生体由来の毒は、毒素(どくそ)と呼ばれる。また自身では毒素を生産する機能はないものの捕食した獲物から毒素を貯蓄したりまた生成する場合もある。(ヤドクガエル科、シガテラ)人工(化学)的に作り出された毒も多い。産業用に作り出された化合物が意図せぬ有害な作用を持つ場合もあれば、化学兵器として用いるために強力な毒性をもった化合物を積極的に作り出す場合もある。 また何らかの人間の活動で意図されず生産されてしまうことがある。公害における鉱毒や環境汚染などはその最たる例と言えよう。この他、地中深くにあって普段の環境では接することの少ない鉱物などは人間を含む自然環境にいる生き物にとって有毒な場合もしばしばである。これは環境に普遍的にあれば淘汰なり免疫なりで対処方法も発達したであろうが、従来環境では隔離されていた物質に触れることで害を受けたケースだといえる。 法律毒物及び劇物取締法では、人間にとって毒にあたる工業用・産業用・実験用の物質を、生命により重篤な影響を及ぼす毒物(医薬用外毒物)と、毒物ほどではないが不都合を与えうる劇物(医薬用外劇物)に分類して、その取扱いに制限を加えている。 また、薬事法では、医薬品に指定されている物質のうち、効能を示す量と毒性を示す量の差が小さい物を毒薬、劇薬としてその取扱いに制限を加えている。
そのほか、有毒物質は種類により食品衛生法、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)、労働安全衛生法、農薬取締法などによって規制される。 利用毒性物質のいくつかは原料や反応の中間体など様々な形で利用されている。最も単純かつ明快で非人道的ながら幅広く用いられた用法は「毒殺」など暗殺の手段であるが、その一方で苦痛を引き起こさない毒は安楽死にも使われる。また殺虫剤や抗生物質は選択毒性を利用して特定生物のみを環境中から排除するために用いられる。かつては船舶の船底や定置網にフジツボなど海洋生物が付着するのを防ぐ意図で有機スズ化合物を含む塗料が用いられたが、これは環境汚染を引き起こすとして禁止されるようになった。 毒性物質の利用例として工業製品の製造や日常生活等で目にするもののいくつかを挙げる。
人体に影響を及ぼす成分であることを逆に利用することで医療の世界で医薬品等として用いられている物質もある。以下はその例である。
なお植物に含まれる他の生物に影響を与える成分が、「たまたま人間の役に立つ」場合もあり、これらはいわゆる薬草となる。 代表的な毒単体
無機化合物
有機化合物(生物由来)
有機化合物(合成物)有毒生物棘や牙により毒液を注入するものと、経口摂取など体内に取り入れることによって中毒症状が現れるものがある。 動物
植物菌類
原生生物毒性の強さをあらわす指標毒の強さの単位として LD50 (50% lethal dose/詳しくは致死量を参照) がある。対象の動物に毒を注射して試験期間内にその半数が死ぬ量をあらわす。 ちなみに、LD50が最も小さい、すなわち最も強い毒はボツリヌス菌の産生する毒素、ボツリヌストキシンであるとされている。その毒性は極めて強く、マウスに対する最小致死量は0.0003 μg/kg。 そのほか、動物では、ウミヘビ、サソリ、スナイソギンチャク(パリトキシン)、フグ、モウドクフキヤガエル(バトラコトキシン)が最も強い毒をもつとされている。 毒と文化毒と食文化食物において、品種改良以前の原種または改良後においても毒を持つものが多い。食品衛生の分野では自然毒と呼ぶ。
「ぶす」と毒日本では古来より、トリカブトから得た毒を「附子」(ぶす)と呼び、狩猟に用いてきた歴史がある。 この附子は神経毒の一種で、中枢神経を冒す作用があり、軽度の中毒では、顔面筋肉の運動が減って無表情になる。醜女を「ぶす」という語源として、「毒を盛られて醜くなった容貌」から来るという説がある。異説では「不男、不女」(ぶおとこ、ぶすけ)の「ぶすけ」を略したものという説もある。 また、『毒』の一文字に「ぶす」という読み方も存在する。名字(姓)や地名に「毒島」「悪島」(ぶすじま)などがある。 著作事件
その他ヒト以外にとっての毒毒性は、生物種によって大きく異なり、ある生物種にとっては無害でも、別の生物種にとっては猛毒であるものすらある。これを利用して、人体に害の少ない殺虫剤、除草剤が開発されている。たとえば一般的なピレスロイドは哺乳動物に対する毒性より、昆虫に対する毒性が1500倍以上強い。逆に破傷風毒素やストリキニーネは、昆虫より哺乳類に千倍から一万倍毒性が強い。哺乳類であっても、ダイオキシンはモルモットとハムスターで数千倍の毒性の差があり、小動物を用いた動物実験はその点を注意すべきである。 同様に、ヒトと他の動物では毒となるものが異なる。例えば、イヌやネコにとってタマネギ(ネギ類全般があてはまる)に含まれる硫黄化合物は、赤血球を溶解し溶血性貧血を引き起こすため毒となる。また、チョコレートに含まれるテオブロミンやカフェインも、イヌやネコが摂食すれば中毒を起こす。 慣用句
派生した用法関連項目外部リンク注釈 |
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