電磁波

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電磁波(でんじは)は、空間電場磁場の変化によって形成された波(波動)のことである。電界磁界がお互いの電磁誘導によって交互に相手を発生させあうことで、空間そのものが振動する状態が生まれて、この電磁場の周期的な変動が周囲の空間に横波となって伝播していく、エネルギー放射現象の一種である。そのため、電磁放射とも呼ばれている。

空間そのものがエネルギーを持って振動する現象であるため、波を伝える媒体となる物質媒質)が何も存在しない真空中でも伝わっていくと考えられている。電磁波の電界と磁界が発生する振動方向はお互いに直角であり、また電磁波の進行方向もこれと直角である。基本的には空間中を直進するが、物質が存在する空間では、吸収屈折散乱回折干渉反射などの現象が起こる。また、重力場などの空間の歪みによって進行方向が曲がることが観測されている。

真空中を伝播する電磁波の速度は特殊相対性理論のなかで仮定された光速度不変の原理によって一定とされ光速度(約30万キロメートル毎秒)と呼ばれている。一方、物質(媒質)中の電磁波の伝播速度は、物体の屈折率によって変化し、屈折率は電磁波の波長に依存するため、物質中での電磁波の伝播速度は波長によって異なってくる。

電磁波の性質は、波長振幅(電磁場の強さは振幅の二乗)、伝播方向偏波面偏光)と位相で決められる。電磁波を波長変化として考慮したものをスペクトルという。波長によって物体に及ぼす作用が少しずつ異なってくる点に着目して、違った呼び方をされることがある。波長の長い方から、電波赤外線可視光線紫外線X線ガンマ線などと呼び分けられている。我々の目で見えるのは可視光線のみだが、その範囲(0.4μm - 0.7μm)は電磁波の中でも極めて狭い。

目次

理論

電磁波は、19世紀に明らかにされていた次の4つの物理法則、1.ファラデー電磁誘導の法則、2.アンペールの法則、3.電場に関するガウスの法則、4.磁場に関するガウスの法則、を統合することによって、1864年ジェームズ・クラーク・マクスウェルにより理論的に予測され、1888年ハインリヒ・ヘルツによる実験で発見されている。電磁波の挙動はマクスウェルの方程式として体系化されており、波動方程式の一般解として必然的に導出される。マクスウェルの方程式では、電磁波は絶対系を基準に速さcで走るものであり、アインシュタイン特殊相対性理論のなかで仮定された光速度不変の原理によって一定とする考え方とはまったく異なる。

20世紀初頭に登場した量子力学は、電磁波という空間が振動して生じた連続性を持ったエネルギー波動と、物質という原子や分子で構成された不連続な粒子(パーティクル)の集合物の間でのエネルギーの授受は、一般の巨視的な波動現象とは異なり、ランダムな熱運動をしている物質側の共振周波数に依存するエネルギーの最小単位量子整数倍でしか行われない、不連性を示すことをマックス・プランクが発見したことから始まった。量子力学の世界では(電磁波)はアルベルト・アインシュタイン光量子仮説に基づいて光子として量子化して扱われている。

種類

電磁波は波長によって呼び名・用途が異なる。

電磁波は波長によって様々な分類がされており、波長の長い方から電波X線ガンマ線などと呼ばれる。

電波は周波数が 30Hz から 3THz の電磁波を指し、さらに波長域によって低周波超長波長波中波短波超短波マイクロ波と細分化される。詳しくは電波の周波数による分類を参照。

は波長が 1mm から 2nm 程度のものを指し、波長域によって赤外線可視光線紫外線に分けられている。

波長が 1nm 以下ではX線、10pm 以下ではガンマ線と呼ぶ。

なお、これらの境界は統一的に定められたものではない。学問分野等によって多少の違いがある。

特徴

電磁波は波長によって様々な特徴をもつ。

最も波長の長い電波は、進行方向に多少の障害物があっても進行することができる。このため、通信放送などの長距離の情報送信に使用されることが多い。テレビラジオ携帯電話などが代表的である。

電波よりも波長の短いは、物質に吸収されて化学反応発熱などの相互作用を生じることがある。この現象はが見える理由でもあるが、他に植物の光合成リソグラフィーなどが該当する。

さらに波長が短いX線になると、物質との相互作用が減少し、透過するようになる。この現象を利用することで、レントゲン写真X線CTを撮影することができる。

生体への影響

電磁波測定器

紫外線X線ガンマ線などの電離放射線は、遺伝子に損傷を与えるため発癌性を持つ。これらの電磁波については年間許容被曝量が法律によって決められている。

家庭で接することの多い 50Hz あるいは 60Hz 程度の電磁波(電磁界)は非電離放射線であり、この観点からは直接遺伝子に影響は与えないとされている。しかし、電界や磁界を変化させてプラズマ化した物体を原子や分子の単位で制御する技術を応用して、生体を構成するたんぱく質や遺伝子などの高分子の構造を、細かく変化させて、リボザイムなどが生成されていったRNAワールドの生命誕生の過程を探る研究を行っている人々の間では、電界や磁界が低い周波数でも生体を構成する高分子にさまざまな作用を及ぼすことが知られている。

国際がん研究機関(IARC)が2001年に行った発癌性評価では、送電線などから発生する低周波磁場には「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」(Possibly carcinogenic to humans)と分類した[1]。これは「コーヒー」や「ガソリンエンジン排ガス」と同じレベルにあたる。なお、静的電磁界と超低周波電界については「ヒトに対して発がん性を分類できない」(cannot be classified as to carcinogenicity in humans)と分類された。これは「カフェイン、水銀、お茶、コレステロール」等と同じレベルにあたる。

高強度のマイクロ波には、電子レンジと同様に熱を生じるため生体に影響を与える可能性がある。このため、携帯電話などの無線機器などでは、人体の電力比吸収率(SAR: Specific Absorption Rate 単位は[W/kg])を用いた規定値が欧州(国際非電離放射線防護委員会)やアメリカ(連邦通信委員会)などでは決められている[2]ほか、日本でも法規制が行われている[3]。学会などでも比吸収率の計算(FDTD法)や人体を模した人体ファントムの組成の決定などが行われている。

一方、電磁波による生体への影響についての疫学調査については正確性に対し疑問が投げかけられることもあり、「健康への悪影響」を示した国立環境研究所の研究については、2003年に「税金のむだ使い」として国会で取りあげられた[4]

ただし、電磁波の健康への影響は調査自体が非常に難しい。また、健康への影響が無いことの証明は、悪魔の証明と同様であり、相当な困難を伴う。一例を挙げると、米国で公的機関NIEHSでRAPID計画という国家単位での電磁波の健康に対する影響の研究が行われた。この機関が作成したパンフレットでは、臨床研究、細胞を用いた実験室での研究、動物を使用した研究、疫学研究の各分野を組み合わせ検証した結果でないと全体像が見えないと解説されている。上記の国立環境研究所の研究については、その検証の内容に問題がある事例の一つといえ、政府も認めざるを得なかったほどである、というものである。

2007年6月に公表された、世界保健機関の公式見解を示すファクトシート322PDFでは、短期的影響に関しては「高レベル(100μTよりも遙かに高い)での急性曝露による生物学的影響は確立されており、これは認知されている生物物理学的なメカニズムによって説明されています。」と評価された。一方、潜在的な長期的影響に関しては「小児白血病」と「小児白血病以外のその他の健康への悪影響」に分けて評価されており、小児白血病に関しては「全体として、小児白血病に関する証拠は因果関係と見なせるほど強いものではありません。」と評価され、その他の影響に関しては「ELF磁界曝露とこれら全ての健康影響との関連性を支持する科学的証拠は、小児白血病についての証拠よりもさらに弱いと結論付けています。幾つかの実例(すなわち心臓血管系疾患や乳がん)については、ELF磁界はこれらの疾病を誘発しないということが、証拠によって示唆されています。」と評価された。

機械への影響

現在のエレクトロニクス機器は、低電圧の信号を高インピーダンスで扱うことが普通であるため、環境中に強い電磁波が存在すると誤動作を生じやすい。その機器が誤動作を生じやすいか生じ難いかを測る指標としてイミュニティ(Immunity)がある。特に携帯電話からは比較的強い電磁波が発せられるため、航空機ペースメーカーなどへの影響が懸念されている。ただし、平成14年の総務省調査では、携帯電話から 11cm 離れると医療機器への影響はほぼ認められなくなるため、安全のためにペースメーカーから22cm以上離して使用すべき等の指針を発表している[5]

参考文献

  1. ^ WHOファクトシートNo.263,"電磁界と公衆衛生:「超低周波電磁界とがん」", 2001年10月 [1]PDF
  2. ^ 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP), "時間変化する電界、磁界及び電磁界による曝露を制限するためのガイドライン(300GHzまで)", 1998年4月[2]
  3. ^ 総務省 電波利用ホームページ 電波環境の保護[3]
  4. ^ 長妻昭, "電気毛布等の小児白血病・脳腫瘍発症への影響に関する質問主意書", 衆議院第156回国会 質問第126号, 平成15年7月11日提出 [4]
  5. ^ 総務省報道資料, "電波の医用機器等への影響に関する調査結果", 平成14年7月2日 [5]

関連項目

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